ずっと離れている人へ。 元気ですか。会いたいな。 さみしいよ。 ちゃんと、笑ってる? 会うのはいつぶりだろう。もう何年になるのかな。あの人を想って何度泣いた?何度『会いたい』と言って困らせた?そのたびあの人が切なそうに私と同じ気持ちの言葉を呟くものだから、私はそのたび泣いてしまって。――うん、離れててもちゃんと想いは通じ合えていたね。心配なんて、全く必要なかったね。―やっと、会えるんだね。 “久しぶり。元気?私は元気だよ。” それだけ書いて、送ったエアメール。遠い国にいるあの人は、その手紙をどう想ったのかな。『これだけ?』って、笑っちゃった?それとも、さみしいと泣いてくれた?もしくは――・・・安心してくれたかなぁ。いつもいつも、心配かけて。月に一度の電話の度、私はあの人を困らせた。それさえ許してくれたそのやさしさに、また泣けてしまって、そして笑った。『ありがとう』と呟いて、名残惜しくなる前に電話を切った。 『155便、サンフランシスコ発、15時45分着の飛行機がまもなく到着いたします―』 「・・・っ、」 空港のロビー。 ザワザワと人が集まるそこに、私は一人佇んでいた。何度も何度も、あの人からもらった腕時計を見つめて。あなたの笑顔を、あなたの声を、あなたの全てを思い出しながら。もうすぐ、あなたの乗った飛行機が、ここに降りる。 「・・・ 」 あなたの名前を呟くのは、離れてからの癖になった。声を聞く度、それは度を増した。はなれてもつながってる・・・そう思っていたから、今日までこれたの。 ―――――月が輝く夜。 いつだったか聞いた覚えのあるメロディーを、あの人を想って。 あの人に届くように。弱弱しい心でさえ、今の私の全てだから。 『なんか、聞こえた気がしたんだよ』 気のせいかな、と笑ったその言葉が凄く嬉しかった。 元気なんだな、とあの人は静かに言った。 「・・・元気?」 「――え?ああ、うん。」 「・・・うん、私も元気だよ」 それだけ、伝えたい。例えさみしくても、会いたくて仕方なくても、私は元気だよ、と。一言、書き添えて。今ここにいる瞬間だって、あの人が生きてるから私は生きてる―――。 ザワつく人々。 うつむく頭に、ぽん、と懐かしい手が置かれる。 「元気だったか?」 「元気だよ」 「うん、俺も元気だ」 顔を上げて、前よりもずっとずっと、大きい笑顔を、 「ただいま」 「おかえり」 あの人に。 |