彼は際立って目立つ存在ながら、何処か人を寄せつけない雰囲気を持つ人だった。私が見ると必ず笑っている。笑っているけれど、本気じゃない―そんな感じ。







傷 は  再 び  開 か れ る



episode * 02  日常 1








「塚川くんっ」
「あ、古木さんやっほー」

まだお互い名字にさん付けくん付けで呼び合っていた頃―結子は最早彼―塚川大―のお目付け役と化していた。思い切り不良だとかそういうわけじゃないのだが、この男がいると何かが違う。・・・そう、クラスメイトを中心とする周りの人たちが言った。

結子が彼の目付け役となったのは、それだけが原因じゃない。入学初日のことは今でも覚えていた。あのときのことは、全て。

「高須ちゃんがノート出してくれないって言ってたよ?!」
「だーかーらー、ノート忘れたんだってばー」
「・・・あのねえ、」

“高須ちゃん”とは、クラスメイトの男子のことだ。女子たちからはそう呼ばれ、男子の一部からも冷やかしで呼ばれることが有る。どうして「ちゃん」なのか、それはただの思いつきに等しい―結子の。


「ひーちゃん全員分揃わないと受け付けないって言ってたじゃん!」
「えー?ひーちゃんそんなこと言ってたっけー?」

・・・さらに補足をすると、「ひーちゃん」は数学の氷上先生のこと。厳しいがノリが良く、生徒受けが良いのでそう呼ばれている男の若い先生だ。

そのひーちゃんこと氷上先生は、先週の授業で確かにこう言った―。


『ノート集めるけど、俺が頼んだ奴がクラス全員分持って来ないと受け付けないからなー因みに、一日遅れる毎に減点していくから、全員』


まあ勿論、彼の授業では珍しい『えーっ』というブーイングがクラス全体から起きたのだが。だが、それ故に皆忘れることは無かった・・・一人を除けば。―その一人が、塚川大という結子の目の前にいる人間なのだから、声を荒げても仕方ない。・・・しかも、必ず塚川絡みだと結子に面倒が回ってくるのだ。結子は彼の“お目付け役”だから。と。


「言ってた!本当は持ってきてるんでしょ?早く出す!」

彼に出会ってから、自分は変わったと、結子は思っていた。入学当時の結子なら、こんなことは言わなかっただろうから―確実に。


そんな結子をよそに、彼は「んー・・・」と何かを考えている。そして数秒後、「仕方ないか」とでも言うようににっこりと笑って“数学”と書いたノートを結子に手渡した。

「ハイ、これでいい?じゃ、俺はちょっと用事があるんで行ってきまーっす!」
「え、ちょ、ちょっと待って塚川くん!もう授業始ま・・・っ」





―つくづく、彼は人の事を考えない人だと結子は心の底から思った。











To be Continued..











因みにこの後大は屋上へ向かいます(物凄く次の話のネタバレ)この次へとそのまま展開していきますよー!!シリアスか、ギャグか。いやそりゃ勿論私の中では前者になると思うんですが、気分によって変わるかもなぁ…大と結子ちゃんがそのままだとそのままギャグ路線で行くかもしれない。わからないけれど。