私は決して、決してそれ以上は求めないと誓った。 例えばそれが、何年も片想いをしていた人間に対してだとしても。 雲が流れ風が吹き、空は笑った
不毛な恋だとかまだすきだったの?とかもういい加減うんざりだ。いやむしろ、正直ここまで未練たらしく想い続けていた自分にうんざりだ。バカだ。あたしはどこまでもバカだ。すきになってもらえないなんて、そんなことすきになったときから分かっていたこと。だけど、だからこそ今まで不毛だしつこいねだ言われていたわけで。んでその上だからこそ想い続けてしまったんだと思う。 ― ああ、もうどうしろっていうのよ。 「あれだよね、すみれはそういうとこだけ得だよね」 「何の話」 何年とは敢えて言わない長年の片想いに想いを馳せていると、クラスメイトの如月空は呟いた。何ですか得って。どういう意味ですか。 「うん、だから、都合よく諦めきれるけどでも想い続けられるっていう、まぁ簡単に言っちゃえば単純っていうか」 「・・・それは褒めてるの貶してるのそれともどっちも?」 「一番最後かなぁ」 あはは、とうなだれるあたしに笑いかける。・・・空は変だ。もう最早あたしの味方なんだか敵なんだか分かりやしない。と言っても、今更あたしたちの間に変な友情でも生まれたりしたらそれはそれでおかしい話なんだけど。 ―や、そんな話じゃなくて。 とにかく空は時々変な発言をする。 けれど、こんな話をしたのは初めてかもしれない。 「・・・っていうか、あたし片想いしてるとか諦めてるとか空に言ってないよね?え、何、怖いよ空!」 「失礼な。すみれ、たまに頭で考えてると思い込んでること、口に出してるんだよー?」 「・・・あたしが一番怖いね。」 「まぁね」 え、それじゃ周りに気付かれまくり?(正解)うわぉ。―まぁ今更隠す気があるわけでもないので、別にいいんだけど。それにしても、口に出てるんだうっわ怖ーい。 「でもさぁ、すきなんでしょう?」 「・・・すきですよ。ってかもしかして相手も知ってたり・・・」 「それはさすがにないけど」 ―知られてたりしたら怖い。いろんな意味で。空だし。 でも、空の目は真剣で。それこそ色々なことを洗いざらい吐いてしまいそうで怖かった。 空は急に変なことを言うけど、それ以上に的を得るのが上手かった。 だから正直空とこういう話をするのを避けていた気がする。だって、本音を言うのは・・・怖い。 「恋って、人にどうこう言われてするもんじゃないでしょ?」 ―ほら、また溢れ出す。 「だからあたしは、いつでも誰に何を言われても、あたしはあたしの恋をしようと思ってた。」 どうして。空にはこんなにも本音を言ってしまえるのだろう。 「・・・まさか、ここまで長くなるとは思ってはなかったけどね」 そう、あたしは自嘲気味に笑う。そんなあたしを見て、空は。 「すみれのそういうとこ、私はすきだよ。すみれはすみれじゃない。それでいいと思う」 「・・・急にそういうこと言うし・・・っていうかそんなこと初めて言われたよ・・・」 ―空は、あたしの言って欲しいことを言ってくれる。 空といると怖くなるのは確かだけど、安心したり、不安が溶けていくのも確か。 あたしは別に空を友達だとか親友だとか思ったことはないけど、それはそれで良いんじゃないかと思う。 それに、きっとそれは空も思ってると思う、し。 「でもね、いくら不毛だとか思って諦めていても、こんな恋、辛くて仕方ないのよ」 「想いが、伝わるわけでもないし?」 「・・・そう。辛くて、もうこれ以上あの人をすきでいたくないと想う。・・・けど、やっぱり。」 ― す き な ん だ 。 「すみれはすみれ、だよ」 「・・・」 その言葉に、溢れてきそうな涙は寸前で止まった。胸の中のわだかまりを拭い去るように、彼女は笑うから。優しくて優しくて、何かを悟るような瞳。彼女も、あたしと同じような状況なんかじゃないかと、ふと思った。 誰に何を言われても構わない。 あたしはあたしの恋をする。 あたしは、それ以上は求めることは、絶対にしないと。 |