笑いあった日々はもう終わってしまうの? 戻ることなく、それは消えていってしまうの? 僕達の未来はただ眩しすぎて見えなかっただけ
ひとりで夜の町中をゆっくりと歩いた。ぽつぽつと光る灯りに吸い寄せられるように一歩、また一歩と理由もなくただ進む。さすがに九月も中頃になれば心地好く過ごせるくらいの気温になって。半袖だと少し寒いくらい肌寒い風が夜を吹き去っていく。 ひとりで歩いているのは別に理由がないわけではなかった。 進んで行くことに、理由がなかっただけで。 毎日忙しい日々で、生きること生活することに精一杯で日付感覚がなくなってしまったときもあった。でもふと、週末になって『私はこの一週間で何をしていたんだろう』と考えてしまう。急くように毎日を生きて、気付けば週末で。特に何も用事もなく、勉強を続ける毎日。 この日々に、何の意味があるというのだろう。 1年前の今頃は毎日が楽しくて仕方なくて、毎日本気で笑えていたのに。本気で泣けることも、本気で怒ることもできていたのに。――私は、何が変わってしまったのだろう。 ふと手を伸ばした先。 そこには月がぽっかりと浮かんでいた。誰か教えて。 幸せはそこに、・・・あるの? 「早紀?」 「・・・真実・・・」 そこには友人が立っていて、おぼろ気に笑みを浮かべていた。私はその笑みに安心して少しだけ足を速く進めて。『何してるの?』と問掛けられて、答えがでない自分がいた。 「・・・何、してるんだろう」 ポロポロと、溢れる気持ち。 真実の笑顔は優しすぎて、色々な意味で私には毒だった。 ――私は、何をしてるんだろう。 毎日に追われて、気付けばおやすみ。なんて。本気で笑うことも、少なくなった。もう全てを妥協して考えてしまうようになってしまった。何もかもを失ったわけじゃない。・・・けれど。 あの頃の日々や笑顔は、もう二度と戻らない。本当に下らないことで笑い合った日々は、いつから変わってしまった?穏やかな心、穏やかな時間。 すべて、かわった。 すべて、もどらない。 「・・・わたし、は・・・」 「・・・ごめんね、よくないこと聞いた」 違う、 そう頭を振る。 違うんだ。変わってしまったのは私も一緒。そして、何も責められないもの。誰も悪くないの。 「大丈夫だよ・・・大丈夫」 柔らかい声が近づいてくる。大丈夫、その言葉を繰り返して。 『不変』なんて、絶対に有り得ない。今この一瞬だって、どんどんと状況は変わってる。でもそれは・・・決して『悪い変わり方』ではないから。きっと私次第で、変わるはずだから。 「大丈夫」 その言葉、信じて。歩ける。 いつでもそこには光があるから。 ――あたたかい陽の光―やさしい月の光。――ずっとそこに、在り続ける。 ・・・生きてるから、。 今は笑えなくても、明日には笑えてるかもしれない。 終わっても、また始めよう。 見上げた暗い空。ぎゅっと、真実の手を握った。―大丈夫―そう、ぬくもりから伝わるように。月はいつでもそこに在る。少しだけ姿を変えて、でも変わらずに。『不変』なんてこの世にはないけれど、変わっていくから私たちは生きていける。 それを私たちは、知ってる。 |