ありがとう。 「バカじゃないの」 「お前はこの年の終りだってのに恋人に喧嘩売ってんのか?え?」 ガラ悪いよ日生くーん。 きゃはは、と笑いながらココアが入っているマグカップを両手で持った。少し熱すぎるくらいの熱が伝わってきて、何だか心地いい。ふわふわと湯気が浮かんでいるのを見ながら、コタツのぬくもりを確かめる。天板の上に顎だけ乗せて上目使いに日生を見ると、小さく彼は溜め息をついて。 呆れたみたいな、優しい笑顔を見せた。 どきんと胸が鳴ったのは・・・気のせいってことで。 「ねぇ、日生」 「なんだよ」 言いながらコーヒーの入ったマグカップを持った彼がテレビの方へ顔を向ける。―心なしか顔が赤い気がするのは・・・いやまぁ、これも気のせいということにしておこう。 「今年も一年いろいろあったね」 「・・・ケンカが史上最多だったな」 ・・・・・・そういうことだけ覚えてるんだから。 思わず苦笑いを溢す。そこじゃないでしょ、そこじゃ。 「初めて日生の口からすきっていう言葉を聞いた年だったね」 「そんなもん覚えてんじゃねぇよ!」 “顔が真っ赤よ?” 笑って。・・・でも、ほんと嬉しかったんだから。 日生の言葉。 何だかんだ言って、来年もまたいろいろありそうだ。あなたの怒る顔を見たら、そう思うよ。・・・知ってる?あたし、こうやってるときが一番幸せなの。 「あ、カウントダウン」 「あと10秒か」 テレビを二人揃って見つめて。少しあなたを横目で見ていると目があってしまった。なんとなく気恥ずかしい。 「あー・・・ろく」 それは彼も一緒だったようだ。 「・・・ご」 「よーん」 「さん」 「にー」 「いち、・・・?!」 あけましておめでとうと言葉を出す前に、彼の唇があたしの唇に重なった。 「・・・ひな、せ?!」 「すきだぞー」 「・・・バカ、あたしもだもん」 恥ずかしくて顔を伏せると頭を撫でるようにあなたの手。 「・・・あけましておめでとう、巴」 「・・・おめでとう、日生」 今年もあなたと一緒にいられますように。 今年もだいすきでいられますように。 あなたが、幸せでありますように! |