馴染み No.3




「・・・・・」


朝。私は未だに悩みつづけていた。

優希のことはどうしようか。

そして、優香にはどう言おうか。

寧ろ、優希のことより優香のことの方が悩んでいた。このことを言ったら余計優香に心配させるんじゃないか。と。不安もありながら、身支度を済ませ、いつもより少しだけ早く出た。





優希とは顔を合わせづらかったから。何か、胸騒ぎがする。優希と顔を合わせたらまた泣きそうになる気がしていた。






『大丈夫?』と気づかうように聞いてくる優香。『大丈夫』そう微笑みながら言う。優香は微笑みながらも少し心配そうな顔をしていた。


優希とは顔は合わせずにいた。勿論、クラスが違っても同じ学校なので必然的に会うときもある。優希が声をかけようとしても、私は顔を合わせないようにしていた。





*  *  *






―放課後。


いつも『帰ろ!』と来る明るい笑顔は優希の元には無かった。きっと昨日のことを気にしてだろう。実際、優希も気にしていた。





何故、風華はいきなり泣き出したのか?
自分は・・・何か傷つけることを言ったのか?
何が、自分たちを離れさせているのか・・・?




ただ、分からずに悩んでいた。












―その頃の風華達の教室。


「ゆーうかっ」
「んー?何ー?」
「・・・うん、えと、昨日のことなんだけどさ・・・今日じゃ無理?」
「え?今日?」
「うん。」
「いや、無理じゃないけど急になんなのよ・・・。」
「早く言いたくなって、ね。」
「ふーん・・・?んじゃ、とりあえず場所変えよ。」
「OK」









私と優香は駅前近くの喫茶店に向かう。


『落ち着いて話せるとこが良いでしょ?知り合いがやってる喫茶店があるの。そこ行こう?』


そう優香が言ったからだった。

「・・・で?」
「ハイ?」
「ハイ?じゃないでしょ。話しなさいよ昨日のコト。」

優香は呆れた顔をし私を見る。

「あぁ・・・・・・・」

思い出したように言い、昨日あったことを話した。優希に言われたこと、その後何故か涙が溢れてきたこと、その所為で話もしていないこと・・・。

「・・・・・・へぇ。で、聞くよ?」
「うん?」
「風華は、藤川のこと、どう思ってるの?」
「え?そりゃ、大事な幼馴染みだよ・・・?」
「風華、それは、本当に今の気持ち?」
「どうして・・・?」

私は優香に問い掛けた。





「私が思うには、風華は今、藤川のこと『ただの幼馴染み』とは想ってないと思うのね?だって、大事な幼馴染みっていうだけなら、『少し距離をおいた方が良い、その方が風華の為になるから。』って言われて、悲しくなんてならないと思うのよ?」



「そうなのかな・・・?」
「そうだよ。」
「それじゃ、私は優希のこと、どう想ってると優香は思うの?」
「・・・・風華はね、きっと藤川のことが好きなんだよ。恋愛の対象として。」
「私が、優希のことを好き?」
「うん。そういうこと。」



「・・・・・・・・・・・」



「・・・風華・・・?」
「ごめ・・・、帰るね。家で、もう一度よく考えてみる。考えがまとまらなかったら電話するから・・・」
「・・・分かった。じゃあね。」
「うん。バイバイ。」






そう言うと、自分の頼んだ紅茶を飲み終え、優香に代金を渡して喫茶店から出た。








「ただいまー。」
「おかえり。遅かったわね。」




母が出てきてそう言った。




「そう?優香と喫茶店行ってたから。」
「風華?なんか元気無いわね?」
「大丈夫。部屋で宿題してくるね。」

少し私は微笑むと、自室がある二階に上がっていった。









・・・・どうすれば良いんだろう。私は・・・優希のことが好きなのかな?




流れてきそうになっていた涙をこらえながら、頭から離れない優香の言葉を何度も思い出していた。