「いーち、にーぃ、さーん、しーぃ、ごーぉ・・・」 わけもなく数を数えてみる。空は青くて、空気はもう暑いとかいうレベルじゃない。ただ、少しだけ風があるから髪が靡いていく。涼しげに見えてそうでもない、残暑のある日。思い出すのは貴方のこと。 別れたのは一週間と二時間前。 私が貴方を追いかけたのも一週間と二時間前。 そんな私を振り払ったのは、その直後のこと。 私は貴方のことがすきだったし、愛してた。だから一緒にいた。ただそれだけなのに。一週間と二時間前から、貴方を見ていない私の心は荒んでいて、もうどうすることも出来ない。確かに私は貴方に別れを告げられたけれど、それはあまりにも一方的で、貴方は私のことを嫌いだなんて一言も言わなかった。だからね、どうしても信じてしまうの。どうしても。 「にじゅういーち、にゅじゅうにーぃ・・・」 数える数は逢えない時間。まだ貴方は私の大切さに気づかないのかしら。なんて、ちょっと自信のあるようなことをいってみたりして。気づいて。私は一度だって貴方以外の人に「すき」なんていっていないの。今だって、心の中は貴方のことばかりで他のことなんて考えられやしないわ。 青空、暑い空気、生ぬるい風。 肌を流れる汗に、だらんとけだるく伸ばした足と、黒いキャミソール。 今でも左の薬指に光る指輪と、汗と同化したような涙。 すべて あなたの もの。 スベテ アナタノ モノ。 ウソじゃないよ。ウソだよ。 笑って。ここに来て。貴方を呼ぶ私の声が嗄れてしまうまえに。 すきだよ。かわることなんてないのに。 泣きくずれる。笑うことなんてできなくて。 やさしい腕で抱きしめてほしい。たった一つの願い。 ―ねえ。 「ばかじゃないの」 「知ってるよ」 目の前にいる、そんな現実に、思わず手を伸ばした。 手を引いて抱きしめられる。ああ、間違いじゃない。このぬくもり。 夏の陽射しなんか知らない。 愛して。一週間と二時間分。 遠い空、キスする狭間、見つめた青。 そんなことしらない。 あいしてる。 |