青い青い空に、澄んだ声が吸い込まれていく。
青空の下には、白いワンピースを纏った髪の長い少女がいた。















『lalala〜la〜〜ha-uh...♪』

誰もいないだろう、そう思って訪れてみた廃屋。
そこは、既に使われていないビルのようだった。
決して田舎の田舎というわけではないがそこまで都会でもないそこは人影なんて勿論無くて。
いや、無いとは思って入ったのだが。

上に上がるつれ大きくなってきたその音。 音・・・――そう、まさしく音なのだ。
声といったほうがわかりやすいだろうが、聴こえてくるのはまるで音で。

「・・・なに・・・?」


『and you're talking for me,in shining sun...♪』



屋上。
辿り着くと、白いワンピースを纏って髪を靡かせながら唄う少女。
その姿に思わず見惚れていると彼女は急に振り向きにこりとやさしくわらう。
口元に人差し指を当て、小さく唄うと思えば、ぞくりとする程力強く。



『I sing for you and so please listen to my song..uh...♪』

―わたしはあなたのためにうたっているの、だからわたしのうたをきいて―


瞬きをすれば、消えてしまいそうなくらい彼女は儚い姿をしていて。
そう思った瞬間に、大きく風が鳴った。



『I am an angel. If you call,I'll go to you.』
―わたしはてんしよ。あなたがよべばわたしはあなたのもとへいくわ。



風がやむと、いつのまにか彼女はいなくて。



彼女の唄だけが頭の中でいつまでもひびいていた。


“I am an angel. If you call,I'll go to you.”



青空へと吸い込まれる唄。
もう二度とないくらいに心を奪われて。

ほんとうにきみは、よべばくるのだろうか。



おおきくいきをすって、さけんだ。




「           」




ふわりと優しく包み込んだ風。








そこには確実に、きみがいた。




天使なんて信じていなかった。でもきみが、それを証明してくれたんだ。もう逢うことはなく、一度きりしか瞳をあわさなかったけれど―( 20050703 )