嘲 笑

落ちてゆく夕陽を見つめて、少しずつ闇に染まっていく空を見上げた。

ねえ、世界はこんなにも広くて
空はこんなにも遠いものだったっけ?

涙があふれた。世界で一人だけな気がした。陽が落ちるにつれ冷たくなる風。それは、季節が変わっていくことを意味していて。幸せはなかった、愛する人もいなかった。私には今、何もない。遠い日々がなつかしくて瞳を閉じる。


笑っていて。
一緒にいて。
毎日毎日、くだらないことばかり話し合って。


それが幸せだなんて、気づくことなんてなかった。
あたりまえだったから。あることが当然だったから。
失くしてしまったときにこんなに苦しいなんて、知らなかったから。



――ひとり。



空は大きくて、やさしくて、あたたかくて、私を包んでくれる。
風は冷たくて、でも涙を乾かしてくれる。
世界はうつくしかった。でも、それだけ儚くて。

世界はいつか壊れるものだと思ってた。でも。

今でも壊れることなく、回りつづける。
日は沈むけれど、また昇ってくる。

闇で染まる。
同化していく。


暗闇の中、涙を流しながら、ふと笑った。




「     」







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そっと呟いた言葉は、わたしの心の中にだけ。