残暑

素足のまま、バルコニーに足をつける。ひやりとした感覚のあとに襲うのは、残暑の陽射し。ジリジリと焼けるような暑さに眉をひそめながらも晴れた空を見上げた。―眩しい・・・―当然だけれど。――こんな風に、無意味な行動をしようと、するようになったのは何でだっただろうか。

キャミソールの肩ひもがだらけたように落ちても気にせずにそのまままた歩みを進める。真夏の時よりは大分涼しくなった風が通り抜けて白いスカートを揺らした。

その瞬間に、急に悲しい感覚に襲われる。身震い。呼吸が詰まる。立っていられなくなって足がバランスを崩して、思わず手をつく。―肩で息をして、唐突に現れた焦燥感と冷や汗と闘うように。涙が溢れそうになったけれどぐっと瞼を強く下に下ろして我慢をした。

遠い遠い空で、自由に鳥たちが飛んで行くのを遠目に見つめた。彼らは幸せなのだろうか。そんなことを思いながら。

急にひとりになった気がした。
世界が無駄に色鮮やかになった。
心が荒んでいく。
私ひとりだけが責められている気がして。

空気に触れた、そこにはなにもなかった。



すべて、失っていた。







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失ったもの。それはすべて。もう何も求めることはない。きっとまた、失ってしまうから。その悲しみにくれるなら、もう大切なものなどいらない。