HAPPY LOVE 中編





あれは中学に入りたての春。そのときには既に学校中の人気の的となっていた彼。あたしは“そんな人がいるんだ”ぐらいにしか思っていなかった。







その日あたしは週番で、日誌を書いて先生に届けようとしていた。

「失礼しまーす。先生ー日誌とアンケートの集計です」
「こんな遅くまでご苦労だったな。暗くなってるから気を付けて帰れよ」
「はーい」


外は本当に暗く、恐らく6時は過ぎていただろう。

「ったく・・・何であたしがアンケートの集計やんなきゃいけないのよ。鈴音も雪も帰っちゃうしさー・・・。って、あれ・・・?」

アンケートをやらされたのを少しムカつきつつ帰ろうとしていた。

が、目に付いたのは図書室の電気がついているところ。あたしは誰かが消し忘れたのかと思って図書室を訪れた。


「あれ?白谷さん?」
「元川・・・君?」


そこには同じクラスだった彼がいた。


「どうしたの?あ、週番だっけ、白谷さん。」
「う、うん。元川くんはこんな時間まで図書室で何してたの?もう六時だよ?」
「え?あ、本当だ。本に夢中で全然気付かなかったよ。」






あはは、と苦笑混じりに笑う彼。あたしもつられてクスクスと笑う。


「あたしはもう帰るけど、元川くんはどうするの?」
「こんな時間だし、もう帰るよ。」
「そっか。それじゃ、電気消すね。」
「うん。」



電気を消し、2人で図書室を後にした。



「あ、白谷さん。」
「へ?」


帰ろうとしていたあたしを彼が呼び止める。


「暗いし、送るよ。」
「え?!い、良いよそんな!」


あたしは思いっきり頭をふり、断る。

「でも・・・本当危ないし。遠慮すること無いよ。俺が送りたいって思うだけだから」

彼はあたしの手をぐいっと引っ張りにっこりと笑って言った。思わず見惚れてしまいそうな笑顔。

「ね?」
「それじゃ・・・お言葉に甘えさせて頂きます」


手を握られたままあたしは真っ赤になって彼に送ってもらうことにした。



帰る間、何故か手は握られたまま。手が握られていた理由は、今のあたしでもわからない。






だけど、色んな話をして盛り上がっている間にそんなことはとっくに忘れていた。










それ以来、何処か気恥ずかしくてお互い喋っていない。
2年になってクラスが変わったこともあり、全く喋っていなかった。










あたしは別れ際に見せたすごく綺麗な笑顔を見てから、
彼のコトがだんだんと好きになっていた。

彼をずっと見つめ続けていた。
















そして今日、あたしは彼にそのことを伝えようとしているんだ。