気持ちなんて、本当は最初から心にあるものだ。
それを肯定するか、否定するか。


気持ちなんて、そんなもんだろ?





エトセトラ ♯12





本当は最初から俺の気持ちは決まってた。
けど、全部を肯定する勇気がなかっただけ。
彼女の知らなかった一面を見て、惹かれる部分もあった。
けれど、一番最初の印象と、親友と宣言した傍ら、いえなかった。
決めることが出来なかった。

心の中で本当は決まっていた気持ちに、嘘をつくことなんて出来ないくせに。
それでも、ただただ否定した。

否定しても、消えなかったのは、彼女への気持ちだけだった。




「・・・それならいいけど、」

全てを洋介に話した。
全ての気持ち、これからどうするかを。

――俺の中では、ある意味での後悔の念でいっぱいで。
お互い、遠回りしただけにお互いが辛い思いをした。
きっと、木川も同じ気持ちを持っているんだろう。
―どちらかが最初に踏み出せば、こんなにも苦しむことはなかったのに。
けれど今それを後悔したところで何も変わらない。
苦しんだ気持ちは消えないし、それでもきっと、何かの糧になったはずだ。

色々考え続けた俺は半ば頭がパンクしそうになりながらも、何とか自我を保っていた。


「何だろうな、遠回り過ぎた」
「・・・、」

「遠回り過ぎて、今更自分が情けなくなった。
 馬鹿みたいに自分の気持ち否定し続けて、その結果がコレだ。
 ホント、馬鹿みたいだっての」

「後悔しても仕方ないだろ?」

洋介の言葉にコクン、と態度だけで返す。
知ってる。けど、そう思わずにはいられないんだよ。

「まぁ、次はお前の番だし」
「そうだなー・・・今から不安になってきた」
「アホか。今からそんなでどうするんだよ」



「・・・わかってるけどさ、」

本当は、わかってるんだ、木川の気持ち。
知ってる。ちゃんとわかってる。

でも、踏み出す勇気が出ないのは、どうしてだろう―・・・



「意地でも俺が桜ちゃんより先に行動移すようにしてやる」
「何、それどういう意味。」
「桜ちゃんに言ったんだよ、由紀がお前に言ったこと。」
「あー・・・」
「多分、桜ちゃん今、由紀の部屋にいるよ」
「・・・マジで」
「ああ、・・・おい?」



木川より先に行動に移すには、多分、こうするしかない。
きっと明日には木川は行動してくる。

と、なると、



今、しかないわけで。



「・・・今ぁ?!」
「明日以降になったら言えない気がするから行く!!」

どれだけ勇気ないんだよ・・・と、あきれた声が後ろからするのは放っておいて帰り支度をする。帰り支度を済ませて、後ろを振り向いて、洋介に向かって笑った。

このことで洋介に頼むのは多分コレで最後だ。
そうするべきで、そうしなければならない。
決して、また、こんな風に、止まってる暇はないんだ。


「頼む、小波に連絡とって」
「どうせだったらそのまま行けよお前・・・」
「いるかわかんねーじゃん!」



やっぱりそのまま行けないのは、その分の勇気が、俺には足りないからだろう。


まぁ、ここまで進めただけ今までの俺から考えたら十分進歩しただろ?



「・・・あ、由紀?桜ちゃんいる?」
『いるけど、何?』
「秀一が話したいんだってさ」
『・・・わかった、部屋にいるから連れてきて』
「了解・・・っと、秀一、行けるかー?」


「おう、行ける。」
「よし、んじゃ由紀ん家な」



洋介の顔を見て安心した。大丈夫そうだ。
悔やんでる暇はない、ただ、今彼女の顔を見なければ、





俺は二度と進めない気がするから。