大きな音がしたときには驚いた。
驚いた直後に、会いたかった奴がいた。
こんな状況なのに彼女の驚いた顔に笑ってしまいそうになった。





エトセトラ ♯14





「・・・・・・木川、」

「聞いて欲しい、ことがあるんだ」


その言葉を呟いたとき、声は震えて動悸は激しくて、情けないくらい緊張していた。木川の顔を見つめているだけでも必死で、このままでよく言おうという気になったなって自分でも笑えた。泣きそうに俯いていた木川は一瞬と惑った表情をして息をひとつ吐き、俺の顔を見つめる。



「―――うん、話して、下さい。」



「・・・よかった」
「なにが・・・?」
「いや、」

安心した。このまままた逃げられてしまったら次は言えない。笑って彼女をまた見て、ああ、すきだななんて感じて。どうして今まで俺は逃げ続けてきたんだろうと不思議に思うくらい心の中は晴れていた。

「木川、俺さ」
「うん・・・」




そう、俺は逃げてたんだ。
木川がすきだという気持ちと向き合うのが怖くて、向き合った後の変化が怖くて。
でも彼女は変わったりしなかった。
親友だと笑って、何も変わらずにそばにいてくれた。初めからその優しさに惹かれていたんだ。やさしくて、明るくて、何もかもを照らすような笑顔に。ただすきだという気持ちに嘘をつく必要なんてなかった。

確かに最初は、変わった奴だと思ってた。失恋した俺を慰めて、気づいたら一緒にいて、笑ってる。今まで話すこともなかった奴に何でも話せている自分も変だなと思っていたけれど。
けど、付き合うことになったとき、なんとなくうれしかった。無条件で彼女の笑顔を見れることに無条件の喜びを感じた。俺は単純だから、彼女の気持ちには気づくことはなかったけれど・・・。その挙句に、失言だ。ただの馬鹿としかいいようがない。



そう、結局は。
最初から彼女への気持ちに気づいていたんだ。
すきだと。
その笑顔を見ていられるなら何も厭わないって。










「・・・木川が、すきだ」





「・・・」
「すきだよ、今まで、ごめん・・・っ」



驚いた顔が、固まって、一瞬暗くなって、泣き顔に変わる。

「ほんと・・・?」
ただうなずくしかできない。

「うそじゃないよね・・・?」
「うそなわけ、ないじゃん・・・」







―泣き顔が、一瞬で、花みたいな笑顔に変わった。







「ほんだぁ・・・っ」
「なんだよ、ばーか」










やっと、繋がった。

俺はばかで、真っ直ぐにしか生きられなくて。
彼女も同じで。

真っ直ぐに生きすぎて交じり合うことの無かった直線が、お互いの方へと傾いて。
交じり合って、繋がって、一本になる。




やっと、笑顔が生まれた。













なあ、すきだよ。


何度だって言ってやる。


君の笑顔を見られるなら。


だから、もう一度。


ふたりで一緒に歩こうか。