「木川・・・」
「・・・―っ」

気まずい空気が、流れた。




エトセトラ ♯5




「 ―・・・ 」
水口と由紀の様子を見ている場合じゃなかった。私はいつのまにかその人物の元へと向かっていて、それは無意識のうちに。・・・どうして、此処にいるかなんて聞かなくても分かっている。水口がいるのだから、いても当然なのだし。―でも。

「その、さ」

沈黙を破ったのは彼だった。私も本田も話しにくかったのは事実で、話そうとしても言葉が、見つからない。

「・・・あのときの答え、聞いてないんだけど」
「・・・っ」

私の顔がわずかに歪んだのを彼も気付いたようで―「ヤバい」―と冷汗をかいたような顔をしていた。

この状況で、その言葉だ。

確かに本田も言葉を発するのに必死だっただろう。だけど、その言葉を聞いて流石の私も頭にきてしまった。



「何なのよ・・・っ」

「え・・・」
「本田のバカ!私の気持ち本当に考えた?!」
「は、んなもん聞かねえとわかるわけ」

「だからバカだってのよ!」

「あのなぁ・・・」




きっと、由紀も水口も気付いていたと思う。・・・でも、あの二人だって二人の問題があるし、割って入ることは無いだろう。




―泣きそうだ。




どうして私がこんなにも辛い想いをしなければいけない?
どうして、どうして。

こんなに本田のことを―。



「・・・っ傷つけたくなかった!」
「・・・は・・・?」
「本田の所為で私があんな目にあってることを言わなかったのは、本田を傷つけたくなかったからよ!」


  止められない涙が、溢れている。
  大切なんだ、本田のことが。
  
  傷つけたくなくて、近づくことを拒絶してる。
  
  
  それくらい、本田は私の中で大きくなってた。


―ねえ、これは―・・・

本田は言葉を失っていた。
私には離れることしか出来ないような気がした。

・・・ううん、それしか出来ない。


出逢わなければ良かったなんて―思いたくないのに。


「ごめん、ね」
「え、木川・・・?」

「もう、私・・・駄目みたい」

「ちょ・・・っ」






「 バイバイ 」





私はその場にいていられなくて、走り出した。
まだ、涙は流れつづけている。




―離れるしかないの。


たとえそれが、最悪な関係となっても。






すきだよ、本田。






でもそばには、いられないの。

想いも、伝えられない。



あなたも同じ気持ちじゃなきゃ、意味がないの。




・・・”バイバイ”