彼女はいつしかいつも通りの姿に戻っていた。
否・・・寧ろ、前より活き活きしているような気もした。





エトセトラ ♯8





テストももうあと3日で始まろうとしているときに見た彼女の姿は、いつか見た笑顔が戻った姿だった。俺はひたすらしかめっ面で彼女を見ていて、それを見た洋介が怖い、と言った。


何があったのかはわからないし、俺自身相変わらず。


ただ「本気だから」と言った割に、合月からは何も無くて。それが一番不思議なことだったかもしれない。こちらとしては、楽でとても良いのだけれど、

(自惚れすぎか・・・)


「なあ、秀一」
「・・・あー?」

ずっと黙って勉強していた洋介が、唐突に口を開く。正直俺たちは良いとは言えない成績だから、こうやって勉強しているのだがこんな状況じゃ、どうも勉強に身が入らなくて今回のテストも変わらないかなと考えていたときだった。

「桜ちゃんと合月、今度のテストで勝負するんだって」
「は?」

きっと小波から仕入れてきた情報なんだろう。それよりもその“勝負”という言葉が妙に気に掛かった。

―勝負?

・・・何で?


「どーゆー意味」
「それがさ、由紀によるとお前を賭けてらしい」
「俺?」

俺、何かしたか?
眉をひそめて考えていると洋介は身を乗り出して、妙に腹の立つ笑顔を浮かべて話す。

「どっちが勝つと思う」
「何言って「だってさ、それだけ自信があるんだろ?合月も」


人の言葉を遮ってまで言う言葉か。

でも、確かにそうだ。いつも小波に負けてるとは言え木川だって学年2位。いつも好成績で小波と同じくらい有名なのだから流石の転入生でもそれぐらいは知っているだろう。どちらが勝とうがどうでもいい。そもそも何で俺を賭けることになったんだろうか。


「ま、どっちでも良いんだけどな」
「・・・洋介、」
「何」
「次のテストで勝負すっか」


急に出た言葉に洋介は驚いて、はぁ?と言った顔をした。今までも争っていたようなものだが、こんな風に正面切って言ったのは初めてで。洋介の気持ちも分からなくはない。


「お前が小波に告るか、告らないかで」
「・・・俺に一つも得は無ぇじゃねぇか。しかももう告ったし」
「あーそっか。んじゃ言い直し。」

一緒だろ、そう洋介は静かに言った。

「由紀に今また言っても、変わらないと思うし。」
「何でだ?」
「だって由紀は、あの時点で“無理”って言ったんだ。今言っても無理だよ」





複雑な顔をして言う洋介は、どこかさみしそうだった。

俺にはその気持ちはわからない。
まだ木川がすきなのか、そうじゃないのかもわかっていない。
ただこのテストが終わったら・・・どうしてか、答えが見つかるような気がしていた。











テスト前の日々なんて早くて、それぞれの想いを抱きながらテストは始まった。


テスト期間は3日間。







それが終わったら、俺たちの関係はどうなっているんだろう。