終了日、テスト三日目の日。
私は出来る限りのことをした。・・・つもりだ。





エトセトラ ♯9





「・・・桜、どうだったの?」
「今回は悪くなかったと思うけど」

けど、星杏の実力がわからない。
分からないから、勝ったのかどうかも、わからないから。


全ての結果が出るまで私はずっとこうしていなきゃいけない。


本田と話すことも許されないか、



・・・もしくは。








気持ちを打ち明けることが出来るチャンスを掴むか。










そしてその三日後、全てのテストが返却された。

結果がわかる。
それなのに、妙な不安感があった。



「よんひゃく、ななじゅう・・・」



私の5教科合計点は470点で、・・・そして。






「そっかぁ、やっぱり桜頭良いなぁ」
「星杏?」
「・・・468点。」
「・・・」


二人とも黙り込んで、ふっと見た星杏の肩が震えていた。
ああ、星杏も本田のことが本気ですきだったんだ、と。



2点差。たったそれだけの差だけれど、私の勝ちは勝ちで。
心底喜んでいる中で本気ですきなんだという星杏を見て複雑だった。

これがもし逆だったら星杏と同じだったかもしれない。
彼女のように、肩を震わせて、静かに涙を流していたかもしれない。


「・・・星杏、」
「大丈夫。大丈夫、だか・・ら・・・っ」

溢れる涙が止まらないのだろう。
その姿を見て、私は。


―彼女の肩を抱きしめることしか出来なくて。


そんな私が、酷く醜く感じた。







「・・・私、ちゃんと言う」
「え?」
「・・・本田に、言うから・・・」





償いのつもりなのか何なのかなんて私にだって分からない。
・・・けれど、けれど。
すきだという気持ちが溢れそうで仕方ないんだって。




「あのね、桜」
「・・・どうしたの?」
「この勝負に負けたって、すきな気持ちは変わらないから。」
「うん、分かってる」
「・・・だから、頑張って。・・・応援、してる」


吹っ切れたような感覚がして、妙に自信が溢れてきた。
ああ、この勝負をして良かったんだ。
星杏に感謝しないと、と想う。





「・・・すきだって、ちゃんと言うから」




今朝聞いた切ないラブソングが、頭の中でぐるぐると回っていた。















“だいすきだよ その想いは消えないから
 たとえば今 すれ違っても
 君に囚われたままの私の心 溶かしてほしい いつか”