Love 2nd
― 朝 昨日、風邪をひいた・・・と思ってたらやはり風邪。 あのとき、薄着で寒い中を歩いていたからだろう。 (財布、どうしよう・・・) そう思って熱を測ったところ、体温計の画面には『38.7』の文字。 「・・・38度7分?!」 どおりで頭がクラクラするはずだ。 「あー・・・もう寝とこ。無理しても熱上がるだけだろうし・・・」 少し鼻声になった私は、これ以上熱をあげないように、寝床に着いた。 * * *
「え?優香が休み?!」 「あぁ、なんとも39度近くの熱があるらしくてな。」 学校にきた風華は優香が来ていないことに気付き、担任の所に来ていたのだった。職員室の前では優希と愁斗が待っていた。二人も、優香を心配してのことだろう。風華が職員室に出てきたのを気付いた二人は風華の元に来た。 「相川何だって?」 「風邪で休みだって。熱が39度近くあるらしいよ。」 「ゲ。マジで?!」 「うん」 「何でまたそんなにも・・・」 「うーん・・・・あ!そう言えば・・・」 「なんか心当たりあるのか?」 「昨日優希と会うまで一緒だったんだけど、優香かなり薄着だったから・・・。昨日結構寒かったでしょ?だからじゃないかな・・・。」 「昨日・・・?」 「? うん。」 ― キーンコーンカーンコーン 三人で話しているとチャイムが鳴ったので、三人は各教室に戻って行った。 昨日、図書館で財布を拾った愁斗は、優香の家に行くことにしていた。元々、優香と愁斗は幼馴染みだったので家に行くことぐらい普通なのだが。 ・・・仕方ないな。行くしかないか。 そんな風に、心の中でぼやきながら。 * * *
― 放課後 「愁斗ー今日遊びに行かねー?」 愁斗が帰ろうと(正確には優香の家に行こうと)したら、優希が風華と一緒に愁斗の机まで来た。 「あー・・・?ごめん。ちょっと無理。今から相川ん家行くんだよ。」 「え?優香ん家?」 風華がビックリしたような顔を見せた。 「・・・優香のお見舞いに行くの?」 ニヤリと笑ってからかいながら言う風華に、愁斗は呆れて返す。 「・・・・違うっつーの。」 「んじゃ何なのよー。」 「昨日お前ら図書館行ってたろ?」 「え?あぁ、うん。で?」 隣りに居た優希は何も言わずに二人の会話を聞いていた。 「で、俺も行ってたんだけどさ、その時にアイツが帰ったトコ見たんだよ。それで、アイツが財布落として行ってさ。中見てみたらアイツの名刺が入ってたからアイツのだって分かって・・・」 「それで、その財布を持っていこうと?」 「そうだよ」 「・・・見舞いがてら、に?」 今まで黙っていた優希が愁斗に言う。 「・・・まぁな。」 それじゃ、俺は行くから。と言って愁斗は教室を出て行った。 「あの二人もそれなりにお似合いだと思うんだけどね・・・」 風華は苦笑しながら言った。 ― その頃の相川家宅。 「優香?大丈夫?」 母が部屋に入って声をかけてくる。 「んー・・・多分大丈夫。」 曖昧な答え方をした私は、かなりしんどかった。 ― ピーンポーン 家のチャイムが鳴る。 「出てくるからちょっと待っててね。」 「んー・・・」 母は私の返事を聞いて静かに1階へ降りていった。 「誰だろ・・・風華かなぁ?」 そう思っていると、下から階段を上って来る音がした。やっぱり風華? ― コンコン 「はい?」 「相川?俺。愁斗だよ。」 聞き覚えのある声・・それは愁斗だった。 「愁斗・・・?あ、入って良いよ。」 「あぁ。」 愁斗が部屋に入ってきてベッドの前に座る。 「大丈夫なのか?」 「あぁ、大丈夫・・・だよ。多分ね。」 「多分って、なぁ。・・・・・・・・・・なんだよ?」 「え?」 「だって、なんか不思議そうな顔してるからさ。」 「あー、いや、だって愁斗がお見舞いってなんかめずらしいなーって思って。」 最後に私のお見舞いなんか来たのいつだっけー?そう言いながら笑うと少し愁斗の顔が赤くなった。 「俺はお前の見舞いに来ちゃいけねーのかよ」 「だから、珍しいって言ってるだけじゃない。」 クス、と笑って私は愁斗の顔を見ていた。 「・・・あ、そうだ。俺、ただ見舞いに来ただけじゃないんだよ。」 「え?」 そう言って愁斗の方を見てみると、鞄の中を探っているようだった。 「これ。」 「あれ?これって・・・!」 それは紛れも無く私の財布だった。図書館に落としたと思っていたあの財布。 「何でこれを愁斗が持ってるの?」 「お前昨日図書館に居たろ?そんとき俺も居たんだよ。で、お前が帰るのを俺が見つけてお前が座ってたとこみたらこれが落ちてた」 「愁斗も居たのね・・・」 「まぁな」 「ありがとね」 「ん。」 そう素っ気無く愁斗は返すと、俯いた。 「愁斗?」 「あ、なんでも無い・・・。・・・・なんだよ?」 「え・・・・?」 「なんでそんなに嬉しそうな顔して笑ってんだよ?」 「・・愁斗が優しいから・・・嬉しいんだよ。」 「・・・あ、そ」 そう赤くなりながら、愁斗は言った。そのあとも、私達は他愛の無い会話をしていた。そして、愁斗は三十分ぐらいすると帰っていった。 何か、愁斗が来てくれて本当に嬉しかったような気がする。 愁斗が傍に居てくれると、安心したんだ。 なんだろう。この気持ち。 |