「少し、距離を置こうか・・・・・・・・・・・・・・」



Precious Time -5-




私が本田にそう言ってから、二日たった。私達はそれ以来会話もせず、目が合っても喋ることは無かった。

・・・元々私達、こういう関係。

そう、元の関係に戻っただけ。・・・そのはずなのに。







「無理してるね、桜。」

由紀はそう言って私の驚く顔を見るなり口元に笑みを浮かべて見ていた雑誌に視線を戻した。私はというと黙ったまま由紀の見ている雑誌を眺めているだけ。

「そんなこと・・・無いよ」
「嘘だね。すっごい無理してるよ、アンタ」


由紀の目は私の苦手ないつもの鋭い目で、私は少しうろたえた。
本当は凄く無理をしているのに、頑なに否定しつづけた。



「無理してるんじゃないなら、後悔?
       どっちにしても桜、辛そうに見えるわよ。」


由紀は溜息をつき、言葉を続けた。


「良い?よく聞きなさい。アンタの今の気持ち・・・
 ううん、心はね、きっと本田のことばかりだと思うわ。」





この気持ちは何なんだろうって、ずっと考えてた。





「ああいう風に言ったのはアンタよね。
 けど、アンタが全部悪いわけじゃないでしょう?」





本田の気持ちが知りたい、そう思った。





「お互いが自分の気持ちに気付かなきゃ、
 アンタたちの問題、終わらないの。分かるわよね」





本田の気持ちが分かれば、自分の気持ち、分かるかな?なんて思った。








だけど、それは甘えにしかならないよね・・・?






ねえ、本田・・・。





「・・・・・・仕方ないわね、まったく。」


由紀の手がすっと自身の頭に置かれたのが分かった。
そのまま由紀の手は、私の頬に当てられた。




・・・私、泣いてる・・・?




由紀には珍しい、優しい顔を見ると、急に涙がどっと溢れて。
クラスのみんなの視線も、どうでも良くなった。




私は、何に悩んでいるの?




私は・・・どうしたいの・・・?