あれから一週間が経ちました。
悩みすぎて正直辛いです、本当に。
けど、いつまでたっても答えは見つかりません。





Precious Time -7-




「ねー由紀ぃ・・・」
「ったく、毎日毎日煩いわね」
「だってさ!全然わかんないんだもん!本田だって何にも言って来ないし!」


甘えにしかならないのは、分かってる。けど…本田の気持ちが知りたい。そしたら私自身の気持ちも分かる気がするから。・・・でも、当の本人は以前と同じような振る舞いで。悩んでいる私が馬鹿みたい・・と思う程。


「だったらさー」
「何よー」
「今の自分の気持ち言えば良いじゃん、本田に」
「・・・は?」
「悩んでるって。わかんないって。」
「・・・」
「要は本田の気持ちが知りたいんでしょ?
 それなら桜がそれ言って、本田の本心聞きゃ良いじゃん」
「そんなに簡単に聞けるかなぁ・・・」
「やってみなきゃわかんないでしょ?」
「・・・そだね」



「それじゃ、頑張れ?」



「・・ほう。協力する気は無し、と」
「有るわけないでしょー?」
「酷いなー・・・」
「そんなに誰かに協力してほしけりゃ洋介にでも頼んだら?」
「あーそーだね。そーしよ。」
「んじゃ呼んできなよ」
「由紀が呼んだ方が早く来るから、由紀が呼んでよ」
「は?!」
「お願い!ね?」
「・・・もう・・洋介ー」

「うわっ早っ」


由紀が呼ぶと、本当に水口はすぐに来た。すぐに来たわりに向こうでの話が盛り上がっていたのか、分が悪そうな顔をしている。

「何だよ」
「私は別に用があるわけじゃないわよ。用があるのはこっち。」

そう、いつもの少し冷たい顔で指を指しながら私の方に水口を向かせた。冷たいというよりも、興味が無さそうと言うか。少し項垂れながらも私は水口に事の成り行きを話した。


「ふーん。で、俺に協力して欲しいと?」
「そーゆーこと。由紀が協力してくれないからさ・・」
「・・・悪いのはあたしじゃないでしょ?」


水口と私に”酷い”という目で見られた由紀は、間髪をいれずにそう言った。『水口、協力してくれる?』と笑顔で言った私に戻ってきた返事は、思いもよらない言葉だった。





「・・・ごめん、桜ちゃん。俺も協力できない。」





「え?どうして・・?」
「助言ならしてあげるよ。いくらでも、ね」
「けど・・・っ」
「由紀の気持ち、分からなくもないしね」


水口の言った意味は私にはわからなかった。由紀は“やっぱりね”という顔をしている。


「俺が言っても、意味無いよ?」
「・・・っ」
「桜ちゃん自身が、秀一にちゃんと言わなきゃ意味が無いわけ。な?」
「・・・」
「・・桜?」
「桜ちゃん?」

由紀も水口も、私の様子のおかしさに気付いたのか私の顔を覗き込んでいた。本当は、何となく分かってた。由紀は勿論、水口も。



協力はしてくれないだろう。って。



―私の心の奥で、人に頼りすぎていた事は、自覚していた―




・・だけど。

自分に自信が持てなくて。

だから、尚更人に頼りっぱなしで。




「そっか・・そうだよね。」

ずっと俯いていた顔を上げると、水口も由紀も、同じような笑みを浮かべていた。私はそんな二人を見て、泣きそうになりながら「えへへ」と苦笑した。


「やっぱり幼なじみなんだね、二人とも」

由紀は、いつものクールな笑顔で。
水口は、由紀とは正反対の優しい笑顔で。

私はいつも通りの明るい笑顔に戻り、二人に「ありがとう」と言った。




言わなきゃ始まらない。
まだ答えは見つかっていないけど、言わなきゃいけない。




悩むのは、今日で終わりにしよう。
いつものような私に戻ろう。